【月光浴/9.4日記】 この3ヵ月の気持ちの変化、関係の変化についてぼんやりと考える時がある。 良い事なのか悪い事なのか、俺の中からガツガツとした棘のある野性味が失わ れつつあり、妹の持つ穏やかな部分に感化され、人間が丸くなってきた。昔の 俺が見たら「今のお前は腑抜けだ」と罵るだろう。 ベランダから、二人でのんびりと月を見ていて思った。 (ああ、“月光浴”みたいだな) 今の俺は、飛び切り可愛い女の子が目の前にいても、眩し過ぎて目を背けたく なる。けっして美人ではないし、あんまり目立ちもしないけど、誰よりも俺に 優しい妹の方が今の俺の好みだ。太陽のように眩しすぎず熱すぎず、ほのかで 柔らかい月明かりのような妹。いい表現だと思った。 (俺はやっぱりこの優しい明かりの方が好きだなあ・・) 何ヵ月か前の、金を渡して性欲の処理に妹を使っていた自分が恥ずかしい。 どんな気持ちでその金を受け取っていたのか・・。ここまで妹に惚れ込んでし まった今の俺には、それを聞くずうずうしさはない。とにかく精一杯“好き” という気持ちを伝えて、妹への穴埋めにしたいと思った。 「お前を好きになって良かったよ・・」 「わたしも、ずっとお兄ちゃんへの気持ちを残しておいて良かったです・・」 自然に唇を重ねた。 「おやすみ」 「おやすみなさい・・」 俺の部屋のドアをそっと閉める妹の姿を見送り、妹のようにほっそりとした 月を眺めるために、独りまたベランダへ戻った。 |