ドキュソ兄氏の帰還をひたすら待ち続けるスレ

604 名前: ドキュソ兄@94 ◆DQN/H2Gc 投稿日: 02/08/28 18:42 ID:???
【母のネックレス 編/8.21日記】

普段アクセサリーなんか付けない俺からすると、
何の事はない普通のチェーンにしか見えなかった。
(プラチナってやつか・・)
同封されていた母親の手紙を読んでみた。
先日送った暑中見舞いのお礼の言葉から始まり、
ネックレスの思い出話が書いてあった。
ちょうど俺ぐらいの歳の頃に、バイト代で買った物だそうだ。
最後に、お礼の言葉が書いてあった。

もう○○ちゃんとは、一生話せないと思ってました。
だから、プレゼントをあげる機会をくれた○○君に、
心から感謝しています。どうもありがとう・・

読み終わった手紙を封筒にしまい、鍵のついた箱に入れた。
箱には母親の写真が一葉、そして住所や電話番号のメモ。
親父にはもちろん、妹にも見せる事はない。
箱は、また元あった引き出しの奥底にしまわれた・・。


一階へ下りてリビングへ行くと、親父が飲んでいた。
髪を短く切った俺を見て、一瞬驚いた顔を見せた。
「誰だ、お前・・」と冗談を言う。
「うっせーな。男前になったとかお世辞ぐらい言えよ」
「あいつも髪型が変ってたぞ」と、箸でキッチンを指す。
「ああ、○○が切ってきたの見て、俺も切りに行ったんだ」
「ふーん・・」
ちょっと仲良くするぐらいなら構わないだろうが、
兄妹そろって髪を切りに行ったとは、ちょっと言えない。
とっさの判断で嘘をついた。

麦茶を取りに、キッチンへ行く。
妹が天麩羅を揚げていた。
「あ、お兄ちゃん。麦茶ですか?」
何も言わないのに、よく分かるもんだ・・と感心しながら、
麦茶を注いでくれる妹を眺めていた。
美容室でしてもらったメイクを落とし、いつもの妹に戻っている。
アレはアレで可愛かったが、こっちの方が落ち着く。
素朴で控え目な妹らしい可愛さがあると思う。


「はい。揚げ立てです」
妹が、小皿にかぼちゃの天麩羅を2つ盛ってくれた。
「ご飯、もうちょっと待っててください」
そう言って、くるりと背を向けると、また何かを揚げ始めた。
リビングから、ビールを持って来いと親父が怒鳴る。
「俺が持ってくからいいよ」
「あ、いいですか。ありがとうございます」
冷蔵庫からビールを出して、小皿を持ってリビングへ行った。
麦茶を飲み干し、親父のビールを注いだ後、自分にも注ぐ。
「ガキが酒なんか飲むんじゃないよ」
「うるせー。合コンにも行くし、タバコだって吸うよ」
「けっ、不良が・・」
「んだよ、突っかかんなよ。もう悪い事はしてねーよ・・」
そう言いながら、2つあったかぼちゃをひとつ親父にすすめた。
熱々の夏かぼちゃは、ほんのり甘くてうまかった。
ビールを飲み干して、小皿を戻しにキッチンへ行く。
「おいしかったよ、かぼちゃ」そう言うと、
「よかったあ」と、妹はうれしそうに笑った。


俺らがキッチンで飯を食っている頃、
先にリビングで飯を食い終えた親父は風呂へ行った。
家風呂ではなく、わざわざ銭湯へ行った。
俺も誘われたが、めんどくせーと断った。

「さっきさ、二人で髪を切った事突っ込まれたよ」
「あ、そうですね。うかつでした!」
さも“やばい!”という顔で、妹が箸を置いた。
「お前が切ったの見て、俺も切りたくなって切ったって言った」
「あ、ナイス嘘でしたね。大丈夫でした?」
「ちょっとジロジロ見られたけど、平気っぽい」
「ふぅ、よかったです」
そう言いながら、また箸を動かし始める。
もぐもぐと食べる仕草は可愛いが、昔から食べるのは遅い。
しばらく雑談していると、俺はもう食い終わってしまった。
「ごち」
そう俺が言うと、食後の麦茶を注いでくれる。


ネックレスを渡そうかと思って待っていたが、
天麩羅だったせいか妹の片付けがやけに遅かった。
「あ、もうすぐ終わります」
そのセリフを三度ぐらい聞いた時にようやく本当に終わり、
リビングで話をしようとしたら親父が帰って来てしまった。
暗黙の了解で時間差を置き、それぞれ部屋へ戻った。

『親父が寝たら、部屋に来い。 ○○』

妹に、そうメールを打って2時間。
妹が小さくドアをノックして、部屋に来たのは夜中だった。
「さっき寝室からいびきが聴こえてました」
「寝付きはいいよな、あのオッサン」
そう言いながら、妹をベッドに座らせた。
俺はあえてくっつかずに、PCデスクのイスに座った。
「お前、親父好きか?」と、唐突に切り出した。
「え、お父さん・・うーん、あんまり」
「じゃあ、お母さん好きか?」
「お母さんですか?うーん、よく分かりません」
「そっか」


俺はイスから立って、部屋の窓を閉めて空調をつけた。
「じゃあ、俺は好きか?」
「はい。大好きです」
「そっか」
タバコを取り出して火をつける。
「俺は、親父が嫌いな時もあるし、好きな時もある」
「はあ・・そうなんですか?」
「うん。一番好きなのは、言うまでもなくお前だよ」
「あ・・ありがとう・・」
「んで、お母さんは、実は俺もよく分からない」
「わたしもです。好きか嫌いかじゃなくて、分からないです」
斜め上を眺める妹。母親の顔を思い出そうとしてるのだろう。
「うん。でも、忘れちゃいけないと思う」
俺がそう言うと、しばらく黙ってから
「・・お母さん、わたしを覚えてるかな」と、妹。
十数年もコンタクトがない妹は、きっと自分など忘れられて
しまったと思っているのだろう・・自信なさげにつぶやいた。
「覚えてるよ、絶対」
「そっかなあ・・」


タバコを消して、立ち上がった。
ベッドに座っている妹を立たせ、
「ちょっと後ろを向いてごらん。目を閉じて・・」
「ん・・」
妹にネックレスをつけた。小さな留め金に苦労した。
「目開けて、鏡を見てごらん」
そう言って、壁の姿見を指さす。
「ネックレス・・くれるんですか?」
「うん。それ、お母さんのネックレスだよ」
「お母さんの・・」
ネックレスを指でつまんで、しげしげと眺める妹。
(何で持ってるの?)と言いたげな表情だ。
「出て行く前に、こっそり盗ったやつ。あげるよ」
連絡を取った上でもらった事は、嘘をついた。
妹を混乱させてもいけないし、母親に迷惑をかけるかもしれない。
もう母親はうちの人ではない。深入りをしてはいけない。
俺は、十数年そう思って生きて来たが、ネックレスは
最初で最後のわがままだと思って母親に頼んだ。


「わあ、いいんですかー?」
意外にも、妹はうれしそうな顔をした。
「俺は十年ぐらい持ってたからな。今度はお前の番だよ」
「大事にします。ありがとう・・」
ちょっと涙目になってる妹を抱き寄せて、頭にキスをした。
「だから、忘れちゃ駄目だぞ。お母さんの事・・」
「はい・・。ありがとう・・」
妹はギューっと抱き着いてきて、二度目のお礼を言った。
「好きじゃなくてもいいよ。忘れなければ・・」
「はい・・分かりました・・」
俺のTシャツに、妹の涙がぽろぽろとこぼれた。

一階で親父がトイレに入る音がして、慌てて身体を離した。
「これ、ありがとう」
三度目の礼を、妹が小声でささやいた。
離れた身体を抱き寄せて、俺は妹の目にキスをした。
そして両手の親指で優しく涙を拭いてあげ、唇を重ねた。
「おやすみ・・」
「おやすみなさい・・」
部屋を出て行く時、妹は振り返ってもう一度
「ありがとう・・」と言った。
俺は黙ってうなずき、妹を見送った。


俺はベッドの上に横になり、ただボーっとしていた。
(渡しておいたよ・・)と、心の中で母親に言った。
その時、五度目のお礼がメールで届いた。

『本当にありがとう。
 忘れないで大事にします。
 おやすみなさい。
 大好きです。 ○○ヨリ 』

よっぽどうれしかったのかもしれない。
「いらない」と言われるかとも思っていたが、
余計なお世話をして良かったなーと思った。
また久しぶりに兄貴らしい事が出来て、ちょっと自分が
誇らし気に感じた・・。

《母のネックレス編 完》
非エロな上に、萌えバナでもない日記ですみません・・。
「ちょっといい兄貴でしょ?」という、イメージUP作戦です。
これで何がどうなったっていう目に見えた変化はないけれど、
これで俺の中では、母親の事は一区切り付いた感じです。

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